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コーヒーを発酵!?酵母を利用した発酵について

酵母を利用した発酵プロセス(Yeast Inoculated Fermentation)について

コーヒーの精選プロセスにおいて、発酵は風味を大きく左右する重要な工程です。

酵母を利用した発酵プロセスは、特定の酵母菌株をコーヒーに意図的に

添加して発酵を進めることで、フレーバーの制御や品質の一貫性を高めることが目的です。

この技法はワインやビールなどの発酵飲料の製造からヒントを得ており

現在は高品質なコーヒーの生産にも取り入れられています。

ビール

酵母発酵の基本概念

酵母は、コーヒーチェリーや粘液質(ミューシレージ)に含まれる糖分を分解し

アルコール・二酸化炭素・そして様々な揮発性化合物を生成します。

これらの化合物が、最終的にコーヒーの風味に影響を与えます。

酵母による発酵の際に重要なのは、酵母の種類、温度、発酵時間、そして粘液質の量です。

酵母を用いた発酵では、従来の自然発酵に比べてより精密にコントロールでき

風味のバラツキが少なく、安定した品質を生み出すことが可能です。

酵母発酵のプロセス詳細

収穫と粘液質の保持

コーヒーのチェリーを適切な熟度で収穫し、果肉を除去した後

豆の周りに残った粘液質が発酵に必要な糖分を提供します。

この粘液質は、発酵過程において酵母の栄養源として重要です。

粘液質=ミューシレージは主に多糖類(ペクチンなど)で構成され

これが発酵中に分解されることで色々な風味を形成します。

酵母の添加

酵母発酵で重要なのは、特定の酵母菌株の選定と添加です。

天然発酵ではなく、制御された酵母菌株を使用することで、発酵の進行を管理します。

選定された酵母は、それぞれ異なるフレーバープロファイルを生成し

酸味、甘み、フルーティーさ、花のような香り、スパイス感など

様々な風味要素を引き出すことができます。

酵母菌株の選定

ワイン

色んな種類の酵母菌があるそうですが例えばワインの発酵にもよく使われる

サッカロマイセス・セレビシ(Saccharomyces cerevisiae)

は一般的な酵母であり、安定した発酵プロセスを提供しながら

フルーティーな香りやエステルを生成します。

他にも、特定の香味や風味を高めるための酵母菌が・・・

サッカロマイセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)

サッカロマイセス・クエルクス(Saccharomyces quercus)

ペディオコッカス・ダミアニ(Pediococcus damnosus)

ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)

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・・・・・・さっぱりわかりません!

数ある酵母菌の中から日々試行錯誤が行われているのです。

酵母の添加方法

酵母は通常、培養された液体や乾燥した粉末として発酵槽に直接添加されます。

添加量は発酵槽のサイズや粘液質の量に依存し

数十万から数百万の酵母細胞が1ミリリットルあたりに含まれることが一般的です。

発酵条件の管理

酵母の活動は温度、酸素の有無、糖度(Brix値)などの環境要因に大きく左右されます。

ここからはコーヒーに限った話ではないのですが・・・

発酵槽の温度は、通常20〜30℃に維持されます。

温度が高すぎると、酵母の活動が急激に進みすぎてしまい、発酵が不安定になるリスクがあります。

逆に、温度が低すぎると発酵が遅くなり、狙った風味を引き出すのに時間がかかる可能性があります。

酵母発酵は通常、嫌気性(酸素のない)環境で行われますが

酸素が少し残っている場合でも、特定の酵母は順応します。

しかし、酸素の存在量が高いと、過発酵や異常な風味が発生するリスクがあるため

酸素レベルの管理が重要です。

発酵時間は通常24〜48時間です。

酵母が粘液質を完全に分解するまでの時間は、温度や菌株によって異なります。

過度な発酵は酸味や苦味を過剰に引き出し、短すぎる発酵では十分な風味が得られない可能性があります。

発酵の進行とモニタリング

発酵中は、定期的に発酵槽のBrix値(糖度)やpH値を計測して進行状況を監視します。

糖度が時間とともに低下するのは、酵母が糖を分解してアルコールや二酸化炭素に変換している証拠です。

Brix値の適切なモニタリングは、発酵の終了タイミングを判断する一つの基準となります。

発酵が進むにつれて、pH値は徐々に低下します。

適切な酸度は、風味のバランスにとって重要です。

一般的に、コーヒーの発酵中のpHは4.0〜4.5の範囲に維持されるのが理想的だそうです。

発酵終了と乾燥

酵母発酵が完了したら、豆から粘液質を洗浄し、乾燥工程に移ります。

乾燥は、従来のウォッシュドプロセスやハニー製法のように行われることが多いですが

発酵によって生じた風味の特性を失わないよう、慎重な温度管理が必要です。

酵母を利用した発酵プロセスの風味への影響

酵母発酵によるコーヒーの風味は、使用する酵母菌株の

種類、発酵時間、環境条件によって異なります。

パンのショーケース

フルーティーなアロマと酸味

多くの酵母菌株は、発酵中にエステルやアルコール類を生成し

フルーティーな香りや味わいを強調します。

特に柑橘系やベリーのような明るいフルーツ感が引き出されることが多いです。

また、酵母の活動が酸味の発現を助け、バランスの取れた酸味を提供します。

花のようなフレーバー

一部の酵母は、ジャスミンやラベンダーのような花の香りを持つコーヒーを

生み出すことができます。

特定の酵母はエステル化合物を生成し、それがコーヒーに花のような香りを与えることが確認されています。

クリーミーでシルキーなボディ

酵母発酵によるプロセスは、コーヒーのボディに影響を与えます。

粘液質の糖分が分解される過程で、シルキーでクリーミーな質感がカップに加わることが多くリッチな飲み口が楽しめます。

透明感のあるフレーバープロファイル

酵母を利用した発酵では、自然発酵よりも不安定な味わいや雑味が少なく

クリーンで一貫したフレーバープロファイルを提供します。

特に、過剰な発酵や腐敗を防ぐことができ、明瞭でピュアな味わいが特徴です。

 酵母発酵プロセスの利点と課題

利点

品質の一貫性: 天然発酵に比べて、酵母発酵はより精密にコントロールでき、風味の安定性が向上します。

風味の多様性: 酵母の種類を変えることで、様々なフレーバープロファイルを創り出すことが可能です。

クリーンカップ: 酵母発酵は、自然発酵よりもクリーンなカップを提供し、雑味が少ない高品質なコーヒーが得られます。

課題

プロセス管理の難しさ: 酵母発酵は高度な管理とモニタリングを必要とし、適切な環境条件を維持しなければ発酵が不安定になる可能性があります。

コストの増加: 特定の酵母菌株を用いることで、コストが上昇することがあり、生産プロセスが複雑になる可能性があります。

風味の過度なコントロール: 酵母発酵は一貫した風味を生み出すことができますが、自然発酵に比べて個性が欠ける場合もあります。

酵母発酵の未来

酵母を利用した発酵プロセスは、今後も高品質なスペシャルティコーヒー市場での需要が増加することが予想されます。

特に、酵母の遺伝子編集や特定地域の風味に適した酵母菌株の選定など、さらなる技術革新が期待されます。

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日本酒・味噌・醤油・漬物・納豆・・・みんな酵母の力ですからね そりゃコーヒーも美味しくなるに決まってます

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