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コーヒーの最初の一滴は一番濃い?抽出前半・後半で味を比較してみた|TDS・EYで分かるコーヒー抽出の科学

はじめに

「コーヒーは最初の一滴が一番濃くて美味しい。」

そんな話を聞いたことはありませんか?

実際、お店でも「前半だけ飲んだほうが美味しいんですか?」「最初だけ取れば一番濃いコーヒーになるんですか?」と質問をいただくことがあります。

確かにドリップコーヒーは、お湯を注ぎ始めてから抽出が終わるまで、味や香り、濃さが少しずつ変化しています。そのため、「最初のほうが濃い」「後半は薄い」というイメージを持つ方も多いでしょう。

では、本当に最初の一滴が一番濃いのでしょうか?

そこで今回は、200mlのコーヒーを抽出し、50mlずつ4つのカップに分けて実際に飲み比べをしてみました。

さらに、味の印象だけではなく、TDS(濃度)とEY(抽出収率)というコーヒーの科学的な指標も交えながら、抽出の前半と後半で何が起きているのかを分かりやすく解説します。

この記事を読めば、

  • 最初の一滴は本当に一番濃いのか
  • 前半と後半ではどのように味が変化するのか
  • なぜサーバーでコーヒーを混ぜるのか
  • 「苦い=濃い」ではない理由

が分かります。

普段何気なく飲んでいる一杯のコーヒーも、抽出の仕組みを知ることで、きっと今までとは違った見方ができるはずです。

Contents

1. ドリップコーヒーは抽出中に味が変化する

ドリップコーヒーは、最初から最後まで同じ味のコーヒーが出ているわけではありません。

お湯がコーヒー粉に触れてから抽出が終わるまでの数分間で、香りや酸味、甘み、苦味などの成分は少しずつ溶け出していきます。そのため、抽出の前半と後半では、同じコーヒー豆を使っていても味わいは大きく変化します。

「最初のほうが美味しい」「後半は薄い気がする」と感じるのは、この抽出中の変化が理由です。

コーヒーの成分は一度に出るわけではない

コーヒーには数百種類もの成分が含まれていますが、それらが一斉に抽出されるわけではありません。

一般的には、次のような順番で抽出される傾向があります。

  • 酸味や華やかな香りは比較的早く抽出される
  • 甘みやコクはその後もゆっくりと抽出される
  • 苦味や渋みは後半になるほど目立ちやすくなる

もちろん、焙煎度や挽き目、湯温、抽出方法によって多少変化しますが、「抽出が進むにつれて味のバランスが変化する」という点は、多くのドリップコーヒーに共通しています。

カップを途中で替えると味が変わる理由

もし抽出途中でカップを入れ替え、前半と後半を別々に飲み比べると、その違いは想像以上です。

前半だけ飲むと?

抽出前半は、香りが豊かで濃厚な印象を受けやすく、明るい酸味やフルーティーな風味を感じやすくなります。

そのため、「前半だけ飲んだほうが美味しい」と感じる人も少なくありません。

後半だけ飲むと?

一方、後半は見た目こそ薄くなりますが、苦味や余韻をつくる成分の割合が増えていきます。

そのため、「薄いのに苦い」と感じることがあります。

これはコーヒー全体の濃度が高くなったわけではなく、抽出される成分のバランスが前半とは変化しているためです。

この理由については、後ほどTDS(濃度)EY(抽出収率)を使って詳しく解説します。

サーバーに落として混ぜる意味

コーヒーショップや競技会では、抽出したコーヒーをサーバーに一度落とし、全体を均一にしてからカップへ注ぐことが一般的です。

これは、抽出前半と後半で異なる味わいを均一にし、どのカップに注いでも同じ味になるようにするためです。

もし混ぜずにそのまま注ぐと、サーバーの形によりますが最初に注いだカップは前半の濃厚な味わいになり、最後に注いだカップは後半の軽い味わいになりやすくなります。

海外の競技ではサーバーをスワール(容器を回して混ぜる)するバリスタも多く見られます。

一方、私はスプーンで2〜3回やさしく攪拌する方法を採用しています。

理由は、抽出前半はTDS(濃度)が高く、後半はTDSが低くなるため、サーバー内では濃度差が生じていると考えているからです。

もちろんスワールでも均一化はできますが、私はスプーンを底まで入れ、底のコーヒー液を持ち上げるように上下を循環させる方が、より均一になりやすく、再現性も高いと感じています。

強くかき混ぜる必要はありません。空気を巻き込みすぎないよう、2〜3回ゆっくり混ぜるだけで十分です。

図解では、分かりやすくするため2色に分けましたが、実際はもっと複雑でサーバーに落ちる瞬間にも混ざっています。コーヒー液は高さ数cmから落下して、衝突・渦・対流が起きます。なので、「前半は下・後半は上」ときれいに層になるとは限りません。

つまり、一杯の美味しいコーヒーは、抽出前半だけでも、後半だけでも完成しません。

それぞれの時間帯に抽出された成分が一つに合わさることで、香り・甘み・コク・苦味のバランスが整い、一杯のコーヒーとして完成するのです。

では、本当に「最初の一滴」が最も濃いコーヒーなのでしょうか。

次の章では、その疑問を掘り下げていきます。

2. 最初の一滴は本当に一番濃いの?

「コーヒーは最初の一滴が一番濃い。」

そんな話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、この考えは半分正解で、半分間違いです。

実際には、どのような状態で最初の一滴が落ちたのかによって、その濃さは大きく変わります。

「最初だから濃い」は半分正解

例えば、お湯を注いですぐにコーヒー液が落ちてきた場合はどうでしょうか。

まだコーヒー粉とお湯が十分に接触していないため、溶け出した成分は少なく、最初の一滴でもそれほど濃くありません。

つまり、「最初だから濃い」とは限らないのです。

一方で、十分に蒸らしを行った後にゆっくり落ちてくる最初の一滴は、非常に濃いコーヒー液になることがあります。

多くの人が「最初の一滴は濃い」と感じるのは、この状態をイメージしているためでしょう。

なぜ蒸らし後の最初の一滴は濃くなるのか

その理由は、コーヒー粉とお湯の接触時間にあります。

蒸らしでは、少量のお湯をコーヒー粉全体になじませ、30〜45秒ほど待ちます。

この時間のあいだに、お湯はコーヒー粉の内部まで浸透し、多くの可溶性成分を溶かし始めます。

つまり、ドリッパーの中ではすでに高濃度のコーヒー液が作られている状態なのです。

そして2投目以降のお湯を注ぐと、その新しいお湯が押し込むようにして、蒸らし中に作られた高濃度のコーヒー液が最初に押し出されます。

そのため、蒸らし後に最初に落ちてくる一滴は、抽出全体の中でも特に濃度が高くなりやすいのです。

逆に、蒸らしが不十分だったり、お湯がすぐに抜けてしまったりすると、高濃度のコーヒー液が十分に作られないため、「最初の一滴=高濃度」とは言えません。

つまり、重要なのは「最初の一滴」であることではなく、蒸らしによって高濃度のコーヒー液がしっかり作られているかという点なのです。


図で見ると分かりやすい

この流れをイメージすると、最初の一滴が濃くなる理由がよく分かります。

① 蒸らし

  • コーヒー粉全体にお湯が浸透する
  • 可溶性成分が溶け出し、高濃度のコーヒー液が作られる

② 2投目

  • 新しく注いだお湯が上から押し込む

③ 最初の一滴

  • 蒸らし中にできた高濃度のコーヒー液が最初に押し出される

このように考えると、「最初だから濃い」のではなく、「蒸らしで作られた高濃度のコーヒー液が最初に出てくる」という表現の方が、実際の抽出現象に近いと言えるでしょう。

 

3. TDSとEYで見る抽出の変化

ここまで、「前半と後半では味が変化する」という話をしてきました。

では、実際にコーヒーの中では何が起きているのでしょうか。

その答えを教えてくれるのが、

  • TDS(Total Dissolved Solids)
  • EY(Extraction Yield)

という2つの指標です。

この2つを理解すると、

「最初は濃い」
「後半は苦い」

という現象を科学的に説明できるようになります。


TDSとは?

TDS(Total Dissolved Solids)とは、

コーヒー液の濃さを表す数値です。

簡単に言えば、

「コーヒー液の中に、どれだけコーヒー成分が溶け込んでいるか」

を表しています。

例えば、

  • TDS 1.60%
  • TDS 1.20%

なら、

1.60%の方が濃いコーヒー

ということになります。

つまり、

TDSは

「液体そのものの濃さ」

を見ている指標です。


EY(Extraction Yield)とは?

一方のEY(Extraction Yield:抽出収率)は、

コーヒー豆から

どれだけ成分を取り出せたか

を示しています。

例えば20gのコーヒー豆を使い、

18%の成分を抽出できたなら、

EYは18%になります。

つまりEYは、

「豆の仕事量」

を表す数値です。


TDSとEYは似ているようで全く違う

ここを勘違いしている人は意外と多いです。

例えば、洗濯でイメージすると

汚れた服を洗うと、

最初のすすぎ水は汚れが濃い。

その後はどんどん透明になります。

でも、

服から落ちた汚れの総量は増えています。

つまり、

洗濯水の濃さ=TDS

落ちた汚れの総量=EY

コーヒーも同じです。

2投目、3投目と液体は薄くなっていく(TDSは下がる)

一方で、

豆から取り出した成分の総量(EY)は増えていく

のです。


抽出中はTDSとEYが逆の動きをする

ドリップ中の変化をイメージすると、このようになります。


抽出前半は、

コーヒー液の濃度(TDS)が非常に高くなります。

しかし抽出が進むにつれて、

新しく注ぐお湯によってコーヒー液は徐々に薄められるため、

TDSは少しずつ低下していきます。

一方、

コーヒー豆から取り出された成分は蓄積され続けるため、

EYは最後まで上昇し続けます。

つまり、

TDSは下がり、EYは上がる。

これがドリップコーヒーの基本的な動きなのです。

参考文献

  • Specialty Coffee Association (SCA), Coffee Brewing Handbook
  • Jonathan Gagné, The Physics of Filter Coffee
  • Specialty Coffee Association, Brewing Control Chart
  • Specialty Coffee Association Brewing Foundation 教材

※本記事の図解は、上記資料を参考にコーヒーモンスターが分かりやすく再構成した概念図です。


「苦い=濃い」ではない

ここが、多くの人が勘違いしやすいポイントです。

後半のコーヒーを飲むと、

「苦い」

と感じることがあります。

すると、

「濃いコーヒーだ」

と思ってしまいがちです。

しかし実際には、

後半ほどTDS(濃度)は低くなっています。

つまり、

液体そのものは薄くなっているのです。

では、なぜ苦く感じるのでしょうか。

それは、

抽出が進むにつれて、

酸味や甘みよりも、

苦味成分や渋み成分が占める割合が高くなってくるためです。

言い換えれば、

苦味そのものが増えたというより、

味のバランスが変化したということです。

その結果、

人は

「苦い=濃い」

と錯覚してしまいます。


味の変化を知ると、抽出の見え方が変わる

ドリップコーヒーは、

最初から最後まで同じ味ではありません。

前半は高濃度で華やか。

後半は濃度こそ低いものの、

苦味や余韻をつくる重要な役割を担っています。

だからこそ、

前半だけでも、

後半だけでも、

一杯のコーヒーは完成しません。

それぞれの時間帯で抽出された成分が合わさることで、

私たちが美味しいと感じる一杯ができあがるのです。


4. 実際に200mlを4分割して比較してみた

ここまで「抽出前半と後半では味が変化する」と説明してきました。

では実際に、どのくらい違うのでしょうか。

今回は200mlのドリップコーヒーを50mlずつ4つのカップに分け、色・香り・味わいを比較してみました。

使用したコーヒー

項目 内容
ケニア
焙煎度 中煎りなど
粉量 15g
お湯 225g
抽出時間 約3分
抽出方法 ハンドドリップ

① 最初の50ml(抽出前半)

最も濃い茶色。

見た目だけでも濃度の高さが分かります。

香り

ケニアらしい華やかな香りが最も強く感じられました。

  • 明るい酸味
  • ジューシー
  • 濃厚
  • 甘さはまだ控えめ

今回の4つの中では、最もTDS(濃度)が高い区間だと考えられます。


② 次の50ml

少し明るくなるものの、まだ十分濃い印象です。

香り

華やかさに加え、甘い印象が出始めます。

  • 酸味
  • 甘み
  • コク

のバランスが最も良く、

個人的には一番完成度が高い区間でした。


③ 次の50ml

かなり透明感が出てきます。

香り

華やかさは少し落ち着きます。

  • 甘さは残る
  • 苦味が少し目立つ
  • コクは十分ある

TDSはかなり下がっているはずですが、

苦味が少しずつ存在感を増してきます。


④ 最後の50ml(抽出後半)

画像ではわかりにくいですが最も淡い色になりました。

香り

香りは穏やかになります。

  • 非常に軽い口当たり
  • 苦味の割合は高い
  • 雑味は意外と少ない

「後半=雑味だけ」

という印象を持つ人もいますが、

今回の抽出では、

苦味は増えても、不快な雑味はほとんど感じませんでした。


4つを並べると違いは一目瞭然

写真を並べてみると、

抽出が進むにつれて

色が少しずつ薄くなっていることが分かります。

これは、

前章で説明したように、

TDS(濃度)が徐々に低下している

こととも一致しています。

一方で、

味は単純に

「濃い → 薄い」

ではありません。

後半になるほど、

苦味や余韻をつくる成分の割合が増えるため、

見た目は薄いのに苦く感じる

という現象が起こります。

この結果からも、

「苦い=濃い」

ではないことがよく分かりました。


5. 飲み比べて分かったこと

200mlのコーヒーを50mlずつ4つに分けて飲み比べてみると、抽出中に味が大きく変化していることを改めて実感しました。

普段は一杯のコーヒーとして飲んでいるため気付きませんが、それぞれを別々に飲むと、まるで違うコーヒーを飲んでいるような印象を受けます。

色の変化

まず最も分かりやすかったのは、色の変化です。

最初の50mlは濃い茶色で、抽出が進むにつれて徐々に透明感が増していきました。

最後の50mlは見た目にもかなり薄くなっており、前章で解説したTDS(濃度)が徐々に低下していくという考え方とも一致する結果でした。

香りの変化

香りは前半が最も華やかでした。

ケニアらしいフルーティーな香りや明るい印象が強く感じられ、抽出が進むにつれて少しずつ穏やかな香りへと変化していきます。

香りそのものがなくなるというより、華やかさから落ち着いた印象へ変化していくように感じました。

味の変化

味の変化はさらに興味深い結果になりました。

前半は濃厚でジューシーな酸味が印象的でしたが、後半になるにつれて甘みやコクが現れ、その後は苦味が少しずつ存在感を増していきます。

しかし、不思議だったのは後半ほど液体は薄いのに、苦味は強く感じたことです。

これは、「苦い=濃い」のではなく、抽出される成分のバランスが変化しているためだと考えられます。

TDS(濃度)は低下していても、苦味成分の割合が高くなることで、人は「濃い」と錯覚してしまうのです。

今回の検証は、そのことを実際に味覚でも確認できる結果となりました。

一番美味しかったのは?

「結局、一番美味しかったのはどれですか?」

そう聞かれると、私が選ぶのは2番目の50mlです。

酸味、甘み、コクのバランスが最も良く、一杯のコーヒーとして完成度が高いと感じました。

一方で、最初の50mlは確かに濃厚ですが、華やかさが前面に出ており、少し尖った印象もあります。

逆に最後の50mlは軽い口当たりながら、苦味や余韻を支える重要な役割を担っていました。

つまり、「一番美味しい区間」はあっても、「一番美味しい一滴」はないというのが、今回の検証で得た結論です。

コーヒーは抽出前半だけでも、後半だけでも完成しません。

それぞれの時間帯で抽出された成分が重なり合うことで、香り・甘み・コク・苦味のバランスが整い、一杯のコーヒーとして完成するのです。


 

6. 前半だけ飲めば美味しいの?

ここまで読むと、

「じゃあ、前半だけ飲めば一番美味しいコーヒーになるんじゃない?」

そう思った方もいるかもしれません。

確かに、抽出前半はTDS(濃度)が高く、華やかな香りや明るい酸味が豊かです。

実際、今回の検証でも前半は非常に魅力的な味わいでした。

しかし、それだけでは一杯のコーヒーとしては少し物足りなく感じます。

その理由を、私はオーケストラに例えています。

コーヒーはオーケストラに似ている

オーケストラは、一つの楽器だけでは完成しません。

例えば、

  • バイオリンだけでは華やかですが、厚みがありません。
  • フルートだけでは軽やかですが、力強さに欠けます。
  • コントラバスだけでは重厚ですが、メロディーがありません。

それぞれの楽器が重なり合うことで、初めて一つの美しい音楽になります。

コーヒーも同じです。

抽出前半には、華やかな香りやフルーティーな酸味があります。

中盤では、甘みやコクが加わり、味わいに厚みが生まれます。

そして後半では、苦味や余韻が全体を引き締め、一杯のコーヒーとしての完成度を高めてくれます。

一見すると「薄くていらない」と思われがちな後半ですが、実はオーケストラでいうコントラバスやチェロのような存在なのです。

目立つパートではありません。

しかし、その低音があるからこそ、全体の音楽に深みと安定感が生まれます。

コーヒーも同様に、後半で抽出される成分が加わることで、前半だけでは表現できない奥行きや余韻が生まれます。

だから私は、前半だけを取り出したコーヒーよりも、前半から後半まで、それぞれの役割が調和した一杯の方が美味しいと考えています。

もちろん、抽出し過ぎれば雑味やえぐみが増えてしまうこともあります。

大切なのは「最後まで抽出すること」ではなく、必要な成分をバランスよく取り出すことです。

一杯のコーヒーは、主役となる華やかな香りだけでも、余韻を支える苦味だけでも完成しません。

それぞれの成分が重なり合い、一つのハーモニーになることで、私たちが「美味しい」と感じる一杯ができあがるのです。

今回の4つに分けたコーヒーを最後、ひとまとめにして飲むといつものコーヒーの味になります。


7. 美味しく2杯淹れるコツ

「同じコーヒーなのに、1杯目と2杯目で味が違う。」

そんな経験はありませんか?

実はこれは珍しいことではありません。

ドリップコーヒーは抽出の前半ほど濃度(TDS)が高く、後半ほど低くなるため、抽出したコーヒーをそのまま順番に注ぐと、最初のカップと最後のカップで味わいに違いが生まれてしまいます。

せっかく丁寧に抽出しても、これでは一緒に飲む人と違う味を楽しむことになってしまいます。

そこでおすすめしたいのが、次の3つのポイントです。

① 一度サーバーに落とす

抽出したコーヒーは、直接カップへ注ぐのではなく、一度サーバーに落としましょう。

サーバーに集めることで、前半と後半のコーヒー液を一つにまとめることができます。

② 全体を均一にする

次に、サーバーの中のコーヒーを軽く混ぜます。

サーバーをスワールして均一化する方法もありますが、私はスプーンで底から2〜3回やさしく攪拌する方法をおすすめしています。

抽出前半と後半では濃度が異なるため、底のコーヒー液を持ち上げるように混ぜることで、全体がより均一になりやすいと考えているからです。

もちろん、勢いよくかき混ぜる必要はありません。

香りを損なわないよう、やさしく混ぜるだけで十分です。

③ 均等にカップへ注ぐ

最後に、均一になったコーヒーをそれぞれのカップへ均等に注ぎます。

こうすることで、どちらのカップでも香り・甘み・コク・苦味のバランスが整った、一杯のコーヒーを楽しむことができます。

「混ぜる」というひと手間が味を揃える

ドリップコーヒーは、抽出そのものに注目されがちですが、抽出後のひと手間も味を左右する大切な工程です。

前半だけでも、後半だけでも、一杯のコーヒーは完成しません。

それぞれの時間帯で抽出された成分を均一にすることで、初めてバランスの取れた味わいになります。

家族や友人とコーヒーをシェアするときはもちろん、自分で2杯に分けて飲むときも、ぜひ一度サーバーで全体を均一にしてから注いでみてください。


よくある質問(FAQ)

Q. 最初の一滴だけ飲むと一番美味しいですか?

必ずしもそうではありません。

蒸らし後の最初の一滴は非常に高濃度ですが、コーヒーは前半・中盤・後半で異なる成分が抽出されます。前半だけでは華やかさは感じられても、甘みやコク、余韻が不足し、一杯のコーヒーとしてはバランスが崩れてしまいます。


Q. 最後のコーヒーは捨てたほうがいいですか?

基本的には捨てる必要はありません。

後半は濃度(TDS)は低くなりますが、苦味や余韻をつくる成分が含まれています。適正な抽出であれば、後半も一杯の味を完成させる大切な要素です。

ただし、抽出し過ぎると雑味やえぐみが増えるため、レシピに合った抽出量で止めることが重要です。


Q. 苦いのに薄く感じるのはなぜですか?

後半のコーヒーはTDS(濃度)は低下しています。

しかし、抽出が進むにつれて苦味成分や渋み成分の割合が増えるため、人は「苦い=濃い」と感じやすくなります。

つまり、「苦い」と「濃い」は必ずしも同じ意味ではありません。


Q. 抽出を途中で止めてもいいですか?

目的によっては問題ありません。

例えば、酸味や華やかさを強調したい場合は早めに抽出を止める方法もあります。

ただし、甘みやコク、余韻まで含めたバランスの良い一杯を目指すなら、レシピ通り最後まで抽出することをおすすめします。


Q. TDSが高いほど美味しいコーヒーですか?

いいえ。

TDSはあくまでもコーヒー液の濃さを示す指標です。

濃ければ美味しいというわけではなく、豆の種類や焙煎度、抽出収率(EY)とのバランスによって味は大きく変わります。

一般的には、フィルターコーヒーのTDSは1.15〜1.45%程度が「おいしい範囲」とされることが多いです。

これはSCA(Specialty Coffee Association)のBrewing Control Chartでも基準として使われています。

TDS(濃度) 印象
0.90%以下 薄く感じやすい
1.15〜1.35% バランスが良い(標準的)
1.35〜1.45% やや濃厚で飲みごたえがある
1.50%以上 濃い印象。レシピによっては重たく感じることも

一方で、TDSだけでは味は決まりません。

例えば、

  • TDS 1.30%、EY 20% → バランスが良い
  • TDS 1.30%、EY 15% → 濃いけれど抽出不足で酸味が強い
  • TDS 1.30%、EY 24% → 濃いけれど過抽出で苦味が強い

ということも起こります。

つまり、TDSは「濃さ」、EYは「抽出のバランス」を表すので、両方を見て初めて味を評価できます。

狙う状態 どうする?
TDS1.30 EY20 普通に抽出
TDS1.30 EY15 豆量を増やして抽出不足にする
TDS1.30 EY24 過抽出にしてバイパスする(お湯を足す)

Q. EYは高いほど良いのでしょうか?

EYも高ければ良いというものではありません。

低すぎると酸味だけが目立つ「抽出不足」になり、高すぎると苦味や渋みが強くなる「過抽出」になりやすくなります。

一般的には18〜22%程度がバランスの良い抽出収率とされていますが、目指す味によって最適な値は変わります。

昔、片手鍋でコーヒー豆を煮出して飲んだことがありますが、飲めたものではありませんでした。


Q. サーバーで混ぜる理由は何ですか?

抽出前半と後半では、コーヒー液の濃度や味わいが異なるためです。

サーバーで全体を均一にすることで、どのカップに注いでも香り・甘み・コク・苦味のバランスが揃います。

私は、サーバーを回す(スワール)方法だけでなく、スプーンで底から2〜3回やさしく攪拌する方法を取り入れています。上下のコーヒー液を均一にしやすく、2杯以上に分ける際も味のばらつきを抑えやすいと感じています。


Q. 最初の一滴はTDSが一番高いのでしょうか?

蒸らしが十分にできている場合は、その可能性が高いと考えられます。

蒸らしの間にコーヒー粉の中では高濃度のコーヒー液が作られ、2投目のお湯によってその液体が最初に押し出されるためです。

一方で、蒸らし不足やお湯がすぐ抜けるような抽出では、最初の一滴が必ずしも最も高濃度になるとは限りません。


まとめ

「コーヒーは最初の一滴が一番濃くて美味しい。」

今回の検証では、この考えは半分正解で、半分間違いであることが分かりました。

確かに、十分に蒸らしを行った後の最初の一滴は、高濃度のコーヒー液が押し出されるため、抽出全体の中でも特に濃くなりやすいと言えます。

しかし、それだけで一杯のコーヒーが完成するわけではありません。

ドリップコーヒーは抽出が進むにつれて、香りや酸味、甘み、コク、苦味のバランスが少しずつ変化していきます。

今回ご紹介したように、

  • 前半ほどTDS(濃度)は高くなる
  • EY(抽出収率)は抽出が進むほど上昇する
  • 後半ほど苦味成分の割合が増える

という特徴があります。

そのため、「苦い=濃い」ではありません。

後半のコーヒーは濃度こそ低くなっていますが、味のバランスが変化することで、私たちは「濃い」と感じることがあるのです。

そして何より印象的だったのは、前半だけでも、後半だけでも、一杯のコーヒーは完成しないということでした。

華やかな香りや明るい酸味を持つ前半。

甘みやコク、余韻を支える後半。

それぞれに役割があり、すべてが合わさることで、一杯のコーヒーとしての調和が生まれます。

だからこそ、抽出したコーヒーは一度サーバーに集めて全体を均一にし、バランスの取れた状態でカップへ注ぐことが大切です。

次にハンドドリップをするときは、抽出全体がどのように一杯のコーヒーを作り上げているのかにも注目してみてください。

きっと、いつものコーヒーがこれまでとは違って感じられるはずです。

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